8.3.11: 重炭酸イオンの動き

重炭酸緩衝系は、次の平衡式によって、H+とCO2とを相互に変換している。
H+ + HCO3- ←→ H2CO3 ←→ H2O + CO2
(H2CO3,重炭酸: HCO3-,重炭酸イオン)
化学的平衡式の基礎については、補足の章で述べています。まとめるならば...

最初、H+もHCO3-もCO2も、濃度は正常範囲である。
いずれかの物質が増減すると、その「変化を打ち消す方向」に、化学反応が進む。しかし...
その変化が完全に消えるのではなく、小さく残る。すなわち、「変化量より少ない量」化学反応が進む。

「酸性物質の定義」、「生体内での生産」で学んだように、HCO3-はアルカリ性物質です。生体内の最重要なアルカリ性物質です。血漿HCO3-の正常値は24 mEq/Lです。

重炭酸緩衝系を実際に動かしてみましょう...(注意!!重炭酸緩衝系の作用のみをまとめました。下記の病態では、実際には、種々の代償が働き、血中の変化は「総和」のようにはなりません。これは、第7章で勉強しましょう。)


a:動脈血中のCO2濃度が上昇すると...

変化の前H++HCO3-←→H2CO3←→H2O+CO2
動脈血に最初に起こる変化                 ↑↑
重炭酸緩衝系の作用 ↑    ↑        ↓ 
総和            

CO2が増大すると、重炭酸緩衝系は、H+ + HCO3- ← H2CO3 ← H2O + CO2の方向に作用します。この化学反応は、CO2を減少させるので、「変化を打ち消す方向」です。「変化量より少ない量」化学反応が進むため、緩衝系により減少するCO2の量(↓)は、最初に増大する量(↑↑)より小さくなります。そのため、総和としては、CO2もH+も増大します。

b:動脈血中のH+濃度が上昇すると...

変化の前H++HCO3-←→H2CO3←→H2O+CO2
動脈血に最初に起こる変化 ↑↑                
重炭酸緩衝系の作用 ↓    ↓        ↑ 
総和            

H+が増大すると、重炭酸緩衝系は、H+ + HCO3- → H2CO3 → H2O + CO2の方向に作用します。この化学反応は、H+を減少させるので、「変化を打ち消す方向」です。「変化量より少ない量」化学反応が進むため、緩衝系により減少するH+の量(↓)は、最初に増大する量(↑↑)より小さくなります。そのため、総和としては、H+もCO2も増大します。

c:動脈血中のCO2濃度が低下すると...

変化の前H++HCO3-←→H2CO3←→H2O+CO2
動脈血に最初に起こる変化                 ↓↓
重炭酸緩衝系の作用 ↓    ↓        ↑ 
総和            

CO2が減少すると、重炭酸緩衝系は、H+ + HCO3- → H2CO3 → H2O + CO2の方向に作用します。この化学反応は、CO2を増大させるので、「変化を打ち消す方向」です。「変化量より少ない量」化学反応が進むため、緩衝系により増大するCO2の量(↑)は、最初に減少する量(↓↓)より小さくなります。そのため、総和としては、H+もCO2も減少します。

d:動脈血中のH+濃度が低下すると...

変化の前H++HCO3-←→H2CO3←→H2O+CO2
動脈血に最初に起こる変化 ↓↓                
重炭酸緩衝系の作用 ↑    ↑        ↓ 
総和            

H+が減少すると、重炭酸緩衝系は、H+ + HCO3- ← H2CO3 ← H2O + CO2の方向に作用します。この化学反応は、H+を増大させるので、「変化を打ち消す方向」です。「変化量より少ない量」化学反応が進むため、緩衝系により増大するH+の量(↑)は、最初に減少する量(↓↓)より小さくなります。そのため、総和としては、H+もCO2も減少します。

チャレンジクイズ

1 重炭酸は 中性物質 酸性物質 アルカリ性物質 である。

2 重炭酸イオンは 中性物質 アルカリ性物質 酸性物質 である。

3 H+ + HCO3- ←→ H2CO3 ←→ H2O +CO2だけにおいて、CO2が正常値から増大すると、平衡式は 

H+ + HCO3- → H2CO3 → H2O + CO2
H+ + HCO3- ← H2CO3 ← H2O + CO2
の方向に作用し、総和として(変化前と比較して)、H+変動せず 増大し 減少し 、HCO3-は  変動せず 減少し 増大し 、CO2の増大は
最初の増大より小さい増大が残る
完全に消えて正常値に戻る
逆に、正常値よりも減少してしまう

4 H+ + HCO3- ←→ H2CO3 ←→ H2O + CO2だけにおいて、H+が正常値から増大すると、平衡式は 

H++HCO3- ← H2CO3 ← H2O +CO2
H+ + HCO3- → H2CO3 → H2O+CO2
の方向に作用し、総和として(変化前と比較して)、HCO3-減少し 変動せず 増大し 、CO2は 増大し 減少し 変動せず 、H+の増大は
最初の増大より小さい増大が残る
逆に、正常値よりも減少してしまう
完全に消えて正常値に戻る

5 H+ + HCO3- ←→ H2CO3 ←→ H2O + CO2だけにおいて、CO2が正常値から減少すると、平衡式は 

H++ HCO3- → H2CO3 → H2O +CO2
H+ +HCO3- ← H2CO3 ← H2O + CO2
の方向に作用し、総和として(変化前と比較して)、H+は  増大し 減少し 変動せず 、HCO3-は  変動せず 減少し 増大し 、CO2の減少は  
完全に消えて正常値に戻る
最初の減少より小さい減少が残る
逆に、正常値よりも増大してしまう

6 H+ + HCO3- ←→ H2CO3 ←→ H2O + CO2だけにおいて、H+が正常値から減少すると、平衡式は 

H+ + HCO3- → H2CO3 → H2O + CO2
H+ +HCO3- ← H2CO3 ← H2O + CO2
の方向に作用し、総和として(変化前と比較して)、HCO3-は  変動せず 増大し 減少し 、CO2は  減少し 変動せず 増大し 、H+の減少は  
最初の減少より小さい減少が残る
完全に消えて正常値に戻る
逆に、正常値よりも増大してしまう

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