4.3.1.4.7: 中枢性(下垂体性)尿崩症と腎性尿崩症

尿崩症は下垂体性と腎性とに分類されます.

下垂体性尿崩症は,下垂体後葉からのADH (vasopressin)分泌低下が本態である.

(既述始め)腎動脈に等張な血しょうが流入します.遠位尿細管の出口(集合管入り口)付近では,尿細管液は低張になり,集合管での水分再吸収がなければ,高張な血しょうが腎静脈から流出します.腎動脈の血しょう浸透圧が等張で下垂体からのADH (vasopressin)分泌が正常であり,集合管の機能が正常なら,集合管の水チャンネルが開くために水分が再吸収され,腎静脈から流出する血しょうは等張になります.(既述終わり) 

しかし,下垂体性尿崩症では,ADH (vasopressin)の分泌低下のため,水チャンネルを開かせる力が弱く,水分の再吸収が少ない.低張な尿が大量に排泄され,高張な血しょうが腎静脈から流出します.これは,大動静脈の血しょうを高張にするため,口渇感と多飲とをひき起こします.さらに,負のフィードバックシステムは下垂体後葉からのADH (vasopressin)の生成,分泌を亢進させようとするが,下垂体後葉からのADH (vasopressin)分泌機能に障害があるため,ADH(vasopressin)の分泌は亢進しません.

 

 

文字の図にまとめてみよう.ADH(vasopression)の分泌低下が主病態です. ADH分泌低下に見合っただけ,水チャンネルの開き(水分の再吸収)は少なく,「血しょう浸透圧の低下」が少ない(高張となる)のです.負のフィードバックシステムは,ADH(vasopression)分泌を亢進させようとするが,これに見合ったADH(vasopression)分泌の亢進がないことが1次的な病態なのです.

 

腎性尿崩症は,集合管における水チャンネルの機能異常が本態である.

(既述始め)腎動脈に等張な血しょうが流入します.遠位尿細管の出口(集合管入り口)付近では,尿細管液は低張になり,集合管での水分再吸収がなければ,高張な血しょうが腎静脈から流出します.腎動脈の血しょう浸透圧が等張で下垂体からのADH (vasopressin)分泌が正常であり,集合管の機能が正常なら,集合管の水チャンネルが開くために水分が再吸収され,腎静脈から流出する血しょうは等張になります.(既述終わり)

腎性尿崩症では,下垂体機能は正常です.しかし,集合管がADH (vasopressin)に反応せず,水チャンネルが開かないのです.水分の再吸収は,当然,少ない.そのため,低張な尿が大量に排泄され,高張な血しょうが腎静脈から流出します.これは,大動静脈の血しょうを高張にするため,口渇感と多飲をひき起こします.さらに,負のフィードバックにより下垂体後葉からのADH (vasopressin)分泌が亢進します.しかし,集合管がADH (vasopressin)の開け命令に反応しないため,水分の再吸収は少ないままです.

 

 

文字の図にまとめてみよう.集合管の水チャンネルがADH(vasopression)に反応せず,開かないことが主病態です. 水チャンネルが開かない(水分の再吸収が少ない)ことに見合っただけ,「血しょう浸透圧の低下」が少ない(高張となる).負のフィードバックシステムは,ADH(vasopression)分泌を亢進します.ADH(vasopression)が多く,水チャンネルを開かせようとする命令が多いにもかかわらず,集合管の水チャンネルが開かないことが1次的な病態なのです.

 

尿崩症をデータで確認しよう

尿崩症では,尿量の増大,尿浸透圧の低下,血しょう浸透圧の増大が特徴である.前記と同様に(1)絶飲(16-20時間),(2)自由飲水,(3)体重1kgあたり20 mLの水分負荷の90分後,の3条件で尿崩症患者さんにおける血しょう浸透圧とADH(vasopressin)濃度を測定した.

尿崩症の患者さんでは水分を負荷しても血しょう浸透圧が低張にならないことがわかる.また,絶飲によって血しょう浸透圧がさらに上昇した際...
下垂体性尿崩症(○)においてADH (vasopressin)の分泌亢進はない

腎性尿崩症(△)においてADH (vasopressin)の分泌亢進は絶飲時の正常人と同様である

ことがわかる.これは,下垂体性尿崩症では,下垂体からのADH (vasopressin)分泌低下が本態であること,また,腎性尿崩症では,集合管における水チャンネルの機能異常が本態であり,ADH (vasopressin)の分泌調節は正常であることから理解できる.

 


血しょうのADH(vasopressin)濃度と尿の浸透圧とを測定した結果である.

尿崩症の患者さんでは,絶飲においても尿浸透圧があまり高値にならないことがわかる.また,尿浸透圧が低値である原因が...

下垂体性尿崩症(○)においては,ADH (vasopressin)の分泌不足

腎性尿崩症(△)においては,ADH (vasopressin)に対する反応不足

であることがわかる.これも,下垂体性尿崩症では,下垂体からのADH (vasopressin)分泌低下が本態であること,また,腎性尿崩症では,集合管における水チャンネルの機能異常が本態であり,ADH (vasopressin)の分泌調節は正常であることから理解できる.

 

チャレンジクイズ

1 腎性尿崩症の本態はADHの分泌低下 水チャンネルの障害 ADHの分泌亢進 である。

2 中枢性(下垂体性)尿崩症の本態はADHの分泌亢進 水チャンネルの障害 ADHの分泌低下 である。

3 下垂体性尿崩症の患者では、バゾプレッシン、抗利尿ホルモン(ADH)の分泌、血中濃度は、高張な血漿浸透圧からの負のフィードバックに 見合わず病的に高い 見合って高い 見合って低い 見合わず病的に低い  。

4 腎性尿崩症の患者では、バゾプレッシン、抗利尿ホルモン(ADH)の分泌、血中濃度は、高張な血漿浸透圧からの負のフィードバックに 見合わず病的に高い 見合って高い 見合って低い 見合わず病的に低い 

5 下垂体性尿崩症の患者では、集合管での水分再吸収は、高張な血漿浸透圧からの負のフィードバックに 見合って少ない 見合わず病的に多い 見合わず病的に少ない 見合って多い  量である。

6 腎性尿崩症の患者では、集合管での水分再吸収は、高張な血漿浸透圧からの負のフィードバックに 見合わず病的に多い 見合って多い 見合って少ない 見合わず病的に少ない  量である。

7 下垂体性尿崩症の患者では,集合管での水分再吸収は,血中の 高い 通常の 低い ADH濃度に 見合わず病的に多い 見合って多い 見合って少ない 見合わず病的に少ない  量である.

8 腎性尿崩症の患者では,集合管での水分再吸収は,血中の 高い 通常の 低い ADH濃度に 見合わず病的に多い 見合って多い 見合って少ない 見合わず病的に少ない  量である.

9 下垂体性尿崩症の患者では,尿の浸透圧は,血中の 高い 通常の 低い ADH濃度に 見合わず病的に高い 見合って高い 見合って低い 見合わず病的に低い  .

10 腎性尿崩症の患者では,尿の浸透圧は,血中の 高い 通常の 低い ADH濃度に 見合わず病的に高い 見合って高い 見合って低い 見合わず病的に低い  .

11 尿量増大、尿浸透圧低下、血漿浸透圧上昇、ADH濃度上昇の患者では 腎性 下垂体性 尿崩症が考えられる。

12 尿量増大、尿浸透圧低下、血漿浸透圧上昇、ADH濃度低下の患者では 下垂体性 腎性 尿崩症が考えられる。

13 下垂体性尿崩症の患者では、血漿浸透圧は等張 低張 高張 である。

14 腎性尿崩症の患者では、血漿浸透圧は等張 低張 高張 である。

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: ADH不適合分泌症候群

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